7月株主優待銘柄 丸善CHI(3159)実は安定成長株?

7月権利の優待銘柄は少なく、丸善CHIはその数少ない7月権利の優待銘柄です。書店部門を抱える丸善CHIも同業他社と同じように、経営は苦しいだろうと勝手に判断していたのですが、調べてみるとそうではなく、案外面白い投資先になりうる可能性を秘めた銘柄であることが分かりました。そのため、今回の記事を作成することにしました。

コロナ禍の影響も何のその、年初来高値更新中

  • 株価……404円(7/3)
  • 時価総額……約373億円(7/3)
  • PER……19倍台
  • 配当利回り……0.5%台(2円)
  • 優待……7月優待、100株で丸善、ジュンク堂書店で利用できる500円券
「ヤフーファイナンスより作成」

株価はおおよそ横ばい傾向でしたが、コロナショックの影響で300円割れまで売られた後に急反発。7月に入り、優待取りの思惑もあってか年初来高値を更新。

コロナ禍による休業要請などもあり、売上が苦境かと思いきや、自宅待機を迫られた人々の読書需要の高まりが影響し、意外にも書店売り上げが好調ではないか、という報道も有り、株価は順調な推移を続けております。

新型コロナウイルスで書店の売り上げが急増。「言われてみると、本読みたい…」

新型コロナウイルスの影響で、出版社や書店が、思わぬ需要急増の恩恵を受けている。全国の小中高校で休校措置が出たことで、自宅で使う学習参考書や書籍の売り上げが大きく伸びているのだ。ダイヤモンド社によると、政府による休校要請当日の2月28日から、すべての児童書の売り上げが急増した。特に『東大教授がおしえる やばい日本史』の売れ行きが良く、臨時休校要請前と比較して、平日で2.5倍、休日で3倍の数字を記録するまでになったという。

https://www.businessinsider.jp/post-209468

ジュンク堂統合後、安定成長路線へ

丸善やジュンク堂などが所属する書店業界は、完全なじり貧状態に陥っており、書店の店舗数や売上などは最盛期から比べても大きく減少しております。下記の図表のように1996年には2.6兆円あった出版物推定販売額が、2018年には1.54兆円まで縮小。これでは上場大手であっても書店経営は大変苦しい状態であっただろうと言えます。

そんな中で、丸善CHIグループはジュンク堂を吸収合併しシナジー効果を追求するも、2018年1月期までは書店販売部門は連続赤字を計上します。しかしながら下記の図のように2017年1月期を境に利益傾向が好転し、赤字が徐々に縮小、2019年からは2年連続での黒字化を達成。赤字を垂れ流していた部門を黒字化させ、出血を防げたことによって、全社的な収益力が強化されます。

会社全体の利益は2015年1月期から経常利益18.97億円から2020年1月期の経常利益は約33億円にまで成長し、稼げる企業へと変化してきました。会計上の数字だけではなく、実際の資金の動きであるフリーキャッシュフローも安定して黒字を確保しており、その結果として復配も実現させることができました。

2015年から算出した年平均成長率は11.7%

2017年1月期が減益となっている為、綺麗な連続増益ではありませんが、2015年1月期から2020年1月期までをならして見ると年平均として毎期約11.7%の利益成長率となっています。

衰退産業と見なされてもおかしくない出版・書店事業を抱えての安定成長を達成しているのは評価に値する実績では無いかと思います。現状は配当は微々たるものですが、今後は株主還元の拡大も検討されるでしょう。配当性向はわずか10%程度なので、今後は一般的な30%前後の配当性向を目指して増配が検討なされるのでは無いかとも推測しています。

https://keisan.casio.jpにて作成したグラフです

優待券は500円の利用券

優待利回りそのものは1%程度であり、利回り的には全く面白くありません。PERを見ても20倍程度と、こちらも特に割安感はありません。ただ、衰退産業での勝ち組は意外と株価的に報われるケースがあり、丸善CHIグループもその可能性を秘めた面白い銘柄になるかもしれません。

秋のノーベル文学賞思惑銘柄の側面も

毎年のことですが、村上春樹氏のノーベル文学賞受賞の思惑が株価を大きく動かす要因になります。文教堂HDや丸善CHIはその有力銘柄で、毎年のようにノーベル賞発表時期が近くなると株価が乱高下しております。そのため、ノーベル賞の発表スケジュールは重要です。

ちなみに2020年のノーベル賞のスケジュールは以下の通りです。

2020年のノーベル賞の発表日程を公表した。 10月5日の医学生理学を皮切りに、物理学賞が6日、化学が7日、文学賞が8日、平和が9日、経済学賞が12日となる。 各の授賞式は例年同様、創設者アルフレッド・ノーベルの命日に当たる12月10日に開かれる

https://mainichi.jp/articles/20200328/k00/00m/030/075000c

このスケジュールはコロナウイルスの影響で流動的になる可能性も考える必要がありますが、今のところ10月初旬に発表があると想定すると、株価は9月ごろから動き出すことも考えておく必要があります。

「鬼滅の刃」最新刊も寄与?初版300万部

書店に行けば、このタイトルは「入荷未定」、とか、「お一人様1冊まで」、とか書かれている店員さんの手書きPOPをよく見かけます。このタイトルについて、大人気なのは言わずもがな。それが7月に最新刊が発売されるということは、書店部門にも少なからず好影響を与えるものでは無いかと思います。

今後、メディアミックスなどの展開も予想されるので、残念ながら連載は終了してしまいましたが、この盛り上がりは少なくとも年内は衰えること無く続くでしょうし、2021年1月期業績への寄与や株式市場的には「鬼滅の刃」関連銘柄としての活躍も期待されます。

今期予想は未定、四季報は「減益」「前号並み」

会社側は今期の業績予想は出しておりませんが、最新の四季報には「反落」「前号並み」「4期ぶりの減益」などの記載があり、これまで続けてきた増益傾向は一端ストップになる可能性があります。

そのため、業績予想が公表された際には株価に対するネガティブなインパクトが考えられますので、投資の際には決算発表には充分注意を払う必要があります。

4万円台なのでポートフォリオの端っこに……

割安感のなさ、配当利回りの低さ、今期業績の減益懸念……。高配当を狙う基本方針からは大きく逸脱してしまいますが、4万円台とわずかな資金で買えること、また数少ない7月優待銘柄としてこうした銘柄もポートフォリオの端っこに加えておくのも有りかな、と思っています。

電子書籍も良いですが、実物の感触もいいですよね

当サイトの情報が全て正しいとは限りません。当サイトの情報に全面的に依拠して投資判断を下すことはお控えいただき、投資に関するご決定は皆様ご自身のご判断で行うようお願いします。

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